「石内尋常高等小学校 花は散れども」の記者会見(9/4・大阪全日空ホテル)に行ってきました。現在96歳という日本最高齢の映画監督である新藤兼人監督と女優の大竹しのぶさんが出席されました。
Q.監督の印象をお願いします。
<大竹さん>「生きたい」で初めてご一緒しまして、演出が明確で出来上がった作品は新藤監督が描きたいものが画面いっぱいに溢れていて、凄いエネルギーを持っている方なんだなと思いました。で、「ふくろう」で再び出演させていただき、そして今回の「花は散れども」に参加して、エネルギーは全然衰えることがなく、若さを感じました。
Q.大竹さんの女優としての魅力を教えてください。
<新藤監督>大竹さんは大衆の中に生きている美人だと思います。俳優というのは技術がもちろん必要なんですが、心が必要だと私は思っていて、心を持ってるのが人格で、それをうまく演技で包んで表現されるので尊敬しています。今回は平凡な先生を主人公にしたんですが、先生と3人の生徒達で、平凡な中の美しさを表現したいと思いました。シナリオを書く前から出演を約束していただいていました、大竹さんならではの結果が出たと思っています。
Q.大竹さんは実在の役をされたんですが、どういう風に演じようと思いましたか?また、どういう演出がありましたか?
<大竹さん>監督は私たちが考えつかないような動きの指示を出してくれます。そういう時にいつも思うのが、その動きをした時にクリアに見えてくるものがあって、それは台本ではわからないものなんです。現場に行って監督の指示を受けて初めてうわーっと心が掻き立てられる、そういうものが監督の演出にはあると思います。
<新藤監督>海のシーンで「豊川さんの足元に砂をぶつけて下さい」と大竹さんにお願いしたんですが、それは豊川さんにぶつけるのではなく、豊川さんの人生にぶつけているんです。そういう注文に大竹さんは直ちに反応してくれる。抽象的な心の表現を上手く出来る人だと思います。監督と役者というのは、静かに溶け込んでいくということが出来ないと、美しい表現は作れないんですよ。また作品を作る際は、大竹さんにお願いしたいですね。
Q.今回は監督の自伝的な部分から作られたとのことですが、この歳になってこの作品を作ろうと思った理由とは何でしょうか?
<新藤監督>大学というのは智恵を教わるところですが、小学校は感性をいただくところだと思うんです。先生というのは親よりももう少し大きな存在でした。だから僕たちの先生は本気で怒って、自分が間違えば本気で謝る。何をするにも本気でした。そして生徒もその本気に巻き込まれていって、それで、和気藹々と良い雰囲気の教室を作ったと思うんです。
少年が初めて触れる社会ですから、後々までも尾をひくようなことが残ります。私の先生は「嘘を言っちゃいけん」とおっしゃいました。その時は良くわからなかったんですが、大きくなり社会の波に揉まれて嘘は通用しないということを感じ、私の人生の支えになりました。そういうこともあり、あまりにも生々しく大きな問題だったので、なかなかシナリオには起こせませんでした。が、95才になって、これはやっとかなきゃいけないと思って作品にしたんです。
みんな平凡なんですが、1人1人は懸命に生きて大きな足跡を残して死にます。そういう問題を取り上げたいと思いました。私と先生との実話を脚色して書いたものなので、教育問題に物申すというような大袈裟なものじゃないんですが、小学校というものはもっと見直さなきゃいけないんじゃないかと。先生の人格や人柄が大きな比重として教室に存在すべきだ、ということを良くわかってもらおうと思いました。
Q.作品で演じられた女性像についてどういう風にお感じになりましたか?
<大竹さん>とても頭が良くて、潔くてかっこいいと思います。自分の心に嘘をつかないで生きるということは、いちばん良い生き方なんだなと演じながら思いました。でも、人間は1人なんだなぁって思います。それはいくら夫婦でもやっぱり1人だなぁと。
Q.校歌を歌うシーンがたくさんありますが、校歌についてどういう風に思われますか?
<大竹さん>何回歌ったかわからないくらい歌いました。覚えなくてもいい役の人やスタッフまで覚えていました。それくらいちからのある言葉だと思います。スタッフとキャストでパーティーをした時も、皆で校歌を歌いました。共通の思い出は人と人とを結び付けるなぁと思います。
なかなか尊敬する先生には巡り会えないですけど、この作品を見てこんな先生になりたいと思ってくれる人がいたら、何かが変わる気がします。
■人間と人間、生と生、という命の繋がりを大切に表現した作品です。「心で感じるものを映し出すのが映像だ」と新藤監督はおっしゃいましたが、まさにそれが形になった作品だと思います。あまり今まで見ることのなかった、テンポや台詞まわしや演出が目に新しく映りました。
撮影当時95歳だった新藤監督の年齢にちなんで、前売り券が950円で販売されるようです。お得な作品をこの機会にご覧になってはいかがでしょうか。
<欠陥ロケット・井上エミ>