女性の夢、憧れを自ら体験してレポートする人気コーナーです。
チョンマゲに前髪を少し垂らし、白いシャツにグレーのニットのベスト、黒のスリムパンツ、白のスニーカーという姿で舞台挨拶に登場したチョ・インソン。長い手足、長身でスレンダーなその姿に客席のファンの歓声とともに『きれい・・』『足長い〜』という声も聞えました。
舞台挨拶では、終始、笑顔でファンに答え、「大阪へは歩いてこようと思ったんですが、遠いので新幹線で来ました」と冗談を言ってみたり、「僕は日本語で皆さんとお話したいです」と言って「日本語で僕とお話ししてください」といきなり会場の一人に話しかけてみたり、会場で愛してるというしぐさを見せて・・というようなことが書かれたボードを見つけると、胸のところに手でハートマークを作って答えたり、短い時間でもチョ・インソンがとてもとてもファンとの時間を大切にしているのが伝わってきました。また、映画についての質問になると、一転してとても真剣な表情になり映画への思い入れの深さも見てとれました。
ユ・ハ監督、チョ・インソン主演の映画『卑劣な街』は韓国で観客動員数200万人を超える大ヒット作となりました。そして、チョ・インソンはこの映画で大韓民国映画大賞 主演男優賞を受賞し、映画俳優としておおいに注目されるようになりました。
ユ・ハ監督の前作『マルチュク青春通り』も軍事政権下にあった時代の高校を舞台に暴力、圧力、ゆがんだ男らしさ、喪失と成長を描いたノアール。チョ・インソンがユ・ハ監督の映画に出ることが決まったというニュースを聞いたとき、ファンとしては『なぜ、やくざ映画・・』と思ったものです。
チョ・インソンは186cmの長身、長い足、長い手、彫りの深い美しい顔、恵まれた容姿はもちろんのこと、ドラマ『バリでの出来事』の財閥の華やかな御曹司役で演技力も高く評価されている俳優です。ラブロマンスをやれば、もっともっと多くの女性ファンを獲得できそうなものを、あえてユ・ハ監督の『卑劣な街』を選んだのです。

この映画を選んだ理由を『ユ・ハ監督と一緒に仕事をしてみたかったということと、ドラマ「春の日」のあと、もっと強いキャラクターのものをやりたかったからです。でも最初は、映画をどのように観てもらえるか、受け入れてもらえるかとても不安。自信もなかった。でも、監督や他の俳優さんががんばってくれて、すばらしい映画になったと思います』と語りました。
確かに『卑劣な街』以前までは、ハンサムなお金持ちのお坊ちゃん役が多かったのも事実。そもそも舞台に立っている人が『卑劣な街』のビョンドゥと同じ人とは思えないほどのギャップでした。
プレス取材でも『チョ・インソンさんを目の前にしていると、やくざのビョンドゥよりも映画監督役のミノの方があっているように思いますが・・』という声も記者から出ました。
ビョンドゥを演じるにあたって、『まず歩き方、方言、行動、しぐさなど、監督ととことん話しあいました』と話すチョ・インソン。確かに、映画の冒頭、ビョンドゥの歩く後姿はとても印象的です。あまりに自然に見える何気ないしぐさもやはり計算されつくしていたのか・・と感心しました。
また舞台挨拶でも、プレス取材でも『この映画で一番観てほしいところは?』『暴力シーンの撮影はたいへんだったでしょう?』といった質問に
『映画のアクションシーンは美しくないし、華やかなものではないのですが、本当に心を込めて1つ1つ演技したので、ぜひ観てほしい』と答えていました。
そして、そのビョンドゥについて、
『ビョンドゥはまったく私自身そのもの。私の人生そのもの。私自身の生きざまに近い』と言い切りました。
目の前にいるチョ・インソンがあまりに爽やかで穏やかで気配りな人なので、ビョンドゥと重なるところが見つかりません・・当然、記者から『どこがどうビョンドゥそのものだと思うのですか?』と質問が出ます。
言葉を選びながら、ゆっくりと答えます。
『この映画は悲しい・・というより、むなしいと感じる人が多いのではないでしょうか。こう考えてみてください。この映画からやくざというのを抜きにしたら・・・わかりやすいと思います。子分は同僚や後輩、兄貴は上司、そして大切な家族、恋人、親友。大切であると同時に大きな荷物でもあります。それを支えていくため自分が発展していくためには、上司を裏切らなければならないこともあります。29歳の男が抱え、支えていくには、あまりに大きかったのではないか・・ということです。この映画の最後に、「Old and wise」という歌が出てきます。年をとれば賢明になるという意味ですが、これがファン会長だとすれば、ビョンドゥは若さゆえ、火の中に飛び込んでいったのだと思います』
女性は苦手な人が多い、暴力、やくざ、裏切り、殺し・・実は私も苦手です。チョ・インソンが主演じゃなかったら、間違いなく避けたかもしれません。でも、チョ・インソンの言葉を聞いてから映画を観ると、ユ・ハ監督やチョ・インソン自身が見てほしかったのは、見世物的なアクションシーンではなく、その暴力や殺しの裏側にある守るべき家族、愛する人との将来、信じたい友情、ビョンドゥという男の生き方そのものだったのだとわかってきます。だから、チョ・インソンは過激な暴力シーンの演技に心を込めたと語ったのだと思うのです。
そして、私が質問した質問は一つだけ。
『ドラマ「バリでの出来事」「春の日」の時の演技と比べると、「卑劣な街」ではとてもチョ・インソンさんの演技が変わったように思いました。この映画を通して、どんな変化があったのですか?』
少し考えてから、
『まず、監督からとにかく熱演しないでくれ・・と言われました。押さえて押さえて演じてくれといわれました。監督と本当にいろんなことを話し合いながら、何気ない日常のくりかえし、積み重ねがドラマそのものを作っていくし、日常を描く事でその人の人間性やキャラクターを表現できることを監督から学びました』
感情をぶつけるような演技が彼の魅力でもありましたが、この映画では過激な暴力シーン以外は、とても静かで押さえた演技に終始していたのは、そういうことだったようです。涙の王子さまと言われるほど、泣きの演技は有名ですが、この映画での涙の演技は、本当に静かで観ているとこちらが息をのむようなものでした。
インタビューで答えてくれた言葉はどれも『なるほど、なるほど、そういうことだったのか・・・』と思うことばかり。記者の目をじっと見ながら、丁寧に言葉を選びながら真剣に答える姿から、いかにこのビョンドゥという役に演じることに真剣だったか伝わってきます。
また、『他にもたくさん韓国の俳優さんが活躍していますが、その活躍をどう思いますか?また、尊敬する先輩、仲の良い俳優さんはいますか?』という質問も出ました。
『どの先輩も尊敬しています。今、私が感じている俳優としてのいろいろな悩みなども、すべて乗り越えてきているわけですし・・・。ただ、彼らにないものを私が持っていますし、私にないものを彼らが持っています。嫉妬は原動力です。が、同時に先輩から多くを学びたいとも思っています。他の俳優さんの演技を素直に認められるようにならないといけないと思っています。』と答えました。
私はこういう質問に<嫉妬>という言葉を使う、チョ・インソンが大好きです。尊敬するけど、嫉妬もする・・。とてもストレートで人間らしいではありませんか。彼の言う<他の俳優さんの演技を素直に認められるようにならないといけない>というのは、嫉妬しなくなるほど、自分が演技がうまくならなくてはいけないし、成長しなくてはいけない・・と言う意味なんだと思います。
美しい容姿ゆえ、そちらばかりが注目されてしまいがちですが、容姿も演技力も兼ね備えた稀有な俳優さんです。日本にはなかなかいないと思います。でも実際、本当に美しいので、美しいのは仕方ありませんね。
つい最近、次回作は再びユ・ハ監督と『史劇&同性愛!?』というニュースも流れました。なぜ史劇?しかも同性愛!?と思わないでもないですが、舞台挨拶の最後に「今後、質の高い演技や作品とともに、また、おうかがいすることを約束します」とファンに語った言葉通り、どんなテーマの映画であっても、私たちの期待を絶対裏切らない!と思います。
今回も日本公開が決まるまで、ずいぶん長い間待ちました。
シネマート心斎橋では、次回作も上映していただくよう、ぜひお願いいたします。
(チョ・インソン取材担当 RINKO)